−剣正塾教本(No9)−

 「技の研究」−表からの抑え−

 

 これまで稽古してきたのは、(1)切り返し、(2)大きな面打ち(振り被っての面打ち)、(3)小手・面打ち、(4)胸突き・面打ち、(5)小手打ちに応じての受け流し面打ち、(6)面打ちに応じてのすり上げ胴打ち、(7)鍔競り合いからの面、小手、胴打ち、(8)下段から攻めての面打ち、左小手打ち、出小手、(9)裏から抑えての面打ち、出小手という技です。最後は、表から抑えての面打ちです。高校生、大学生が使う技としては、以上で充分だろうと考えます。使い方を覚え、互角稽古で使い、他流稽古、他流試合に臨み、実践的に技を磨くことです。


 表から抑えての面打ちとは、竹刀の左側面で相手の竹刀を抑え(剣先を外して相手の反撃を断つ)、手首を返して面を打つものです。まず、一足一刀の間に構え、接刀したまま、相手の竹刀の左しのぎにあたる部分を竹刀の左しのぎにあたる部分(便宜上、しばしば竹刀の側面と表記する)で抑えながら「送り足」に打ち間に入り、手首を返して面を打つものです。現代剣道では、一般的に構えは低くなっており(剣先が突きの部位から下方に外れている状態)、表から用意に抑えることができます。


 この技を稽古する場合、右手を支点に左手で抑えることです。そのためには、左の握りが右腕の下に来るように使うことが肝要です。剣道型三本目の打太刀の突きの形を想定して見てください。あれよりいくぶん左の握りが、右腕の下に入り込むような形になります。手首を返す時、右手首を返し、左手を支点に、右手で面を打たないことです。右手首を返し、柄皮の中を支点に、左右の手で打つことです。この使い方が難しいと言えます。稽古する以外に習得する手立てはありません。


 形として抑えて、打つことを習う。これが第一段階です。第二段階では、相手が打ち間に入ると同時に抑え、面打ちに変化することを稽古することです。留意しなければならないことは、入られてから抑えるのではなく、相手が打ち間に入る寸前(気を感じて)抑えながら入り、面打ちに転じることです。この技を自由に使えるようになれば他の技はいらない、と言っても過言ではありません。心して稽古することです。


 しかし、技は、絶対ではありません。相手に抑えられたらどうするのか。瞬時に、竹刀を下に抜いて抑えを外し、竹刀の右側面で相手の竹刀の右側面を抑え、手首を返して小手又は面を打つことです。これが第三段階での稽古です。


 抑えた瞬間に抜かれ、抑え返されたら万事窮すことになるのでしょうか。業は、そんなに単純ではありません。入る前に、抜かれ、抑え返されることを想定し、迎えて打ち間に入り、抜かれた瞬間、相手が抑える前に竹刀の右側面で相手の竹刀を抑え、小手又は面を打つことです。技の極意、ここにあります。



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剣正塾教本 −高校生を対象にした技の研究−

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