−剣正塾教本(No7)−
鍔競り合いで留意していることは。
(1)竹刀を交差するように構えること(並立するようには構えない)、
(2)手元を下げること、
(3)つねに攻めの態勢を取ること、です。
「鍔競り合い」は、剣道から発した言葉で、国語辞典(新明解国語辞典)には、「刃を鍔の所で打ち合わせて互いに押し合うこと」とあります。「しのぎを削る」=鋭く争う、という意味をも持つ言葉です。
鍔競り合いから、(1)左面打ち、(2)右面打ち、(3)小手打ち、(4)右胴打ちの技を稽古しています。
(1)の左面打ちは、鍔競り合いのからの一般的なわざと言えます。正面打ちのように受け止められていますが、それは、竹刀が並立している状態から打たれているからで、交差した状態からは左面打ちが自然です。
ここで重視しているのは、(2)の右面打ちです。右から左に動くものを捉えることは、右利きの人にとっては、利き目を持つことから容易です。しかし、左から右に動くものを捉えることは、逆のことであり、容易ではありません。そのことが、左面打ちを有効なものにしているのだと考えます。ただし、右の握りを視点に、左の握りを回し、右面を打つことができることを前提にしています。
(3)の小手打ちで留意しなければならないことは、交差した状態からどうやって竹刀を抜いて小手を打つか、ということです。言い替えれば、「体を引いて抜くか」「抜いてから引くか」ということです。ここでは、「右の握りを視点に左の握りを右斜め前に(右腕の下)出して竹刀を抜き、右の握りを後に引くようにして小手を打ちながら体を後に引くこと」を稽古します。右手を押し、左手を引いて打つことで「強い打ち」が可能となります。
(4)の右胴打ちで留意したいことは、竹刀の先を頭の上で回して打つのではなく、上から斜め下に打つことです。現実には、これが中々できてはいません。導入として、鍔競り合いの状態から鋭く、速く両腕を上に上げ、振り被った状態をつくり(「あっちむいて、ほい!」と同じように相手の腕が上に上がる、又は、その可能性が高い)、上から斜め下に打ち下ろすことを稽古することです。慎重さがある場合(相手の身長が同じか、低い場合)は、膝を折り、正しく胴を打つことに心掛けることです。
さらに留意したいことは、相手との間を空けないこと、鍔競り合いから後に下がらないこと、です。いずれも有効な打ちが難しくなるからです。又、相手の強い押しを避けるために後に後にと下がることがあります。これでは、最後には場外に出されてしまうことになります。相手の押す力を利用して、右足を右斜め前に出して体を入れ替えることです。つねに打つことを考えておくことです。