出版物の紹介
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●連載 剣正塾教本
bP 警視庁剣道教本を読む
bQ 高校生を対象にした技の研究(新連載)
 
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剣道第一基本1
1、 構え(要義)
2、 構えとは、相手に対する攻防の姿勢をいい、時と場所、相手の強弱、武器の種類等により種々異なるが、構えの中枢となるべき、中段、上段、下段、八相、脇構えの五種をもっと基本の構えとする。
中段の構えは、諸種の構えの基礎で、常の構えとも称し、平素の練習は主としてこれによるものである。したがって中段の構えは、姿勢正しく、進退攻防応変が自由で、少しのすきもなく、心広く、体ゆたかなるを要する。

「教本」では、中段、上段、下段、八相、脇構え、を基本の構えとしています。構えは、構えとして存在しているのではありません。どんな攻め、どんな打突、どんな技を使うのか、と一体として存在しているのです。中段、上段、下段からの打突、技は、一応理解できるとしても八相、脇構えからどんな打突、どんな技があるのか、知る人は少ないと思います。
例えば、八相からどんな打突、技が考えられるのでしょうか。左片手面、小手打ち、片手突きがあります。突きは、右上なら左斜め下に、打つように突くことになります。上段に対する平正眼からの突きに似ています。泉先生は、左手(首)を支点に、右手の握りの部分を四本の指(親指を除く)で弓のように引いて構え、右手を離して左片手で打突する、と伝授されています。理に適う打突と言えます。八相は上段に似て「八方破れ」の構えと言えます。相手は、突き、面打ちを考慮することになります。相手の突きは、左足を後ろに引きながら相手の竹刀を切り落し、面を打つことです。面打ちに対しても同じ対応をすることです。先には、右足を踏み出して相手の竹刀を切り落し、面を打つことです。体を瞬時に移動するため、「膝のため(曲がり)」に留意する必要があります。同時に八相に適した間合いをとることです。剣先が交差しないだけに「眼」で間合いを測ることが求められることになります。
脇構え。どんな打突、技が考えられるのでしょうか。危機に遭遇し、身を守ろうと必死に棒を振り回す。そんな中に脇構えからの打突、技の「形」を見ることができます。日本剣道形四本目と同じように上段に振り被り切り結ぶことができます。小手を下から切り上げることもできます。体を引いて相手の打ちを上から切り落すこともできます。問題は、どんな構えに対して「脇構え」に構えるか、です。と同時にここでも間合いが勝敗を決することになります。稽古の中で使い、検証することです。
 
剣道第一基本2
2、体の運用(省略)
3、打突(単一技、連続技)
−要義−
 打突とは、相手を打ち突く動作にして、これを奏功するには充実した気勢と正確な刀法及び適法な姿勢を必須の要件とする。
 気勢とは、意思のまさに活動せんとする状態である。すなわち充実した気勢とは鷲鳥の鳥雀を拍つがごときをいう。心
 正確な刀法とは、各関節部及び掌中の合理的作用により操作する刀の運用法。適正な姿勢とは、各種打突のときの正しい体勢をいう。したがって打突が気、技、体一致の活動に至るには、正確な課程を遵守し不朽の修練を必要とする。
 すなわち第一基本の打突は、まず単一技を課し、次いで連続技に及ぶ。単一な部位を打突するものにして打突の初歩であるが、これらの指導に当たっては、細かな点もおろそかにせず、厳正にすることが必要である。
 連続技は、単一技を連続して行なう動作である。この技は、単一技より複雑で、個々の技が不正確になりやすいから、各個の動作に全力をこめ、大きく正しく練習を行なわせる。初心者は迅速よりむしろ正確に技を行い、習熟するのに従って自然に速度を速めるように指導する必要がある。

 打突には、充実した気勢と正確な刀法と適法な姿勢が必須の要件としています。充実した気勢とは、元気があればいいというものではありません。稽古に裏付けされた確信としてあることを忘れないことです。正確な刀法、特に泉流剣道においては、竹刀は刀であるという認識を持つことです。堀口清先生は、「剣道日記」の中に「(泉先生は)たまたま打たれても構えを崩さず『真剣ではできない技ですよ』との中で訓えているといふ温情を覚えさせられた」と書かれています。「真剣ではできない技」とは、真剣は、そんな使い方はできないし、真剣では、そんな打突はできないということです。相手を叩けばいいというだけの「竹刀剣道」のあり方を戒めてのことと受け止めることです。
 気、技、体の一致した打突をするには、正確な課程を遵守し不朽の修練を必要とするという指摘は大事です。泉流剣道をめざす者は、まず竹刀を抑えること、抑えを外すことを習い、覚え、使い、磨くことです。決して剣先を外すことなく打ち出さないことです。
 不朽の修練。正確な課程は、他が準備してくれるかも知れません。しかし、これは、自ら求めるしかないのです。
 
 

剣正塾教本 −警視庁剣道教本を読む−

目次
剣道第一基本1〜2剣道第二基本1〜3剣道第二基本4〜5剣道第三基本1〜2剣道第三基本3〜4剣道第三基本5〜6剣道第三基本7〜