出版物の紹介
絶版と思われていた剣道日記が発見されました!
限定30冊のみ販売致します。
●連載 剣正塾教本
bP 警視庁剣道教本を読む
bQ 高校生を対象にした技の研究(新連載)
 
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剣道第三基本7
 
 3、打突(巻き落し技)
−要義−
 巻き落し技とは、相手が打突してくる刀を巻き落して打突する技である。本技は、打突してくる刀を軽く応じ気味にして、神速(迅速)に変化し、一呼吸に巻き落すもので、この技に習熟すれば相手の刀を完全に巻き落しまたは体を崩し、剣勢を殺いて容易に打突することができる。この技が巧妙にできるには、相当の熟練を要し、特に機会と掌の裡の作用、体と足の捌き、腰のしめ方に特段の関心を必要とする。「相当の熟練を要(する)」のが「巻き落し技」です。長崎先生も「泉先生覚え書き」の中に「竹刀を巻き落すのは、大事中の大事である」と書き遺しています。「教本」には、1面を左に巻き落し、面の打ち方、2突きを左に巻き落し、喉の突き方の二つの技が収められています。

−面を左に巻き落し、面の打ち方−
 (これは)面を打ってくる刀を巻き落し、すかさず面を打つ動作である。(相手が面を打ってきたら)左足を少し後に引き、右足をこれに引き寄せながら物打ちどころの左鎬で、打ってくる刀の中ごろを左斜めに軽く応じ気味にして、右足を踏み込みながら、刀のつば元にすり込む心持ちで、左より右へ円を描くようにして巻き落し踏み込み、(相手の)面を打つ。(注)
 1足の踏み方。左足を退き、右足を引き寄せたときは踵は上げ爪先だけ地につく程度として、そのまま縁のの切れないように踏み出すこと。
 2応じ方。応ずるときの両手は、正しい中段の構えのまま前上に伸ばすようにする。

文章としては、新に解説を付け加える必要はないように思います。しかし、実際に技として使うとなると容易ではありません。しかし、私たちには、「映像としての秘伝書」があります。
 「ビデオ・剣道日記」には、面打ち、小手打ち、突きに対する巻き落し技が収められています。泉先生は、特に左手首の使い方について、文章ではなかなか理解できないことを分析的な映像として残してくれています。現代剣道にとっては、大変な遺産と言えるものです。
 「大事中の大事」な技、「巻き落し」を習得するには、大変な努力を要することになります。手順が必要です。まずは、相手に中段に構えてもらい、自分は、中段の平正眼に構え、手首を返して相手の竹刀を巻き落すことから稽古することです。
 
剣道第三基本8
 
3、打突(巻き落し技)
−突きを左に巻き落し、喉の突き方−
 (これは)突いてくる刀を巻き落し、すかさず喉を突く動作である。(相手の突きを)少し後退し物打ちどころの左鎬で、突いてくる刀を左斜めに応じ気味にし、右足を踏み込みながら、左より右へ円を描くようにして巻き落し、踏み込んで(相手の)喉を突く。

 相手の突きを左足から引きながら竹刀の左側面で支える。瞬時に右足から踏み込み、手首を返して相手の竹刀を巻き落す。手首を正して突きを突く。分析的に説明するとこんな手順になります。これを一挙に行なうのが、巻き落し技の妙技なのかも知れません。面打ち巻き落し、突き巻き落し、「教本」には、収められていませんが、小手打ち巻き落しも前の手順で稽古することです。面を打って貰い、竹刀の左側面で支える。特に右手首を支点に、左手首を左斜め前に出することです。突きを突いて貰い、竹刀で支える。小手も同じです。面打ち、突き、小手打ち、と手元の位置は、それぞれに応じて上下に変化することになります。左手(拳)で右手(二の腕)の下を叩くように手首を返して巻き落すことです。剣先の左側面で右斜め前の空間を叩くように巻き落すことが肝要です。面を打つ。手首を正して打つ。手首の返しが難しい場合は、竹刀の右側面で平打ちに打つことです。突きの場合も平に突くことです。流れるように打ち、突くことができたら手首を正して打ち、突くことです。
 「教本」に収められていない巻き落し技に「小手打ちを右に巻き落し、面の打ち方」があります。「ビデオ・剣道日記」に収められている技です。剣先を下から回し、竹刀の右側面で相手の竹刀を巻き落し、手首を正して面を打つものです。裏から抑える場合は、竹刀を平面的に使いますが、巻き落しの場合は、円を描くように使うことになります。表と裏、技を表裏一体として捉え、使うことです。
 
剣道第三基本9
 
3、打突(離れ際の技)
−要義−
離れ際の技とは、つば競り合いの場合、離れ際に打つ技である。すなわち、つば競り合いは、間が近接したため空しく離れ、またはそのまま接近している時は、相手に乗ぜられる危険がある。離れ際には、必ず相手の虚隙を打って退くか、相手に技を出させないように刀を押さえて退くものとする。そして本技は、その進退駆け引きに神速を期し、また密接不離の関係にあるつば競り合いと合わせて会得することが肝要である。

−離れ際、面の打ち方−
(これは)つば競り合いの場合、相手の虚隙に乗じ、離れ際に面を打つ動作である。つば競り合いとなった後、機を見てつば元で相手のつぎ元を軽く押す。相手が押し返す。すかさず退きながら相手の面を打つ。

−離れ際、小手の打ち方−
(これは)つば競り合いの場合、相手の虚隙に乗じ、離れ際に小手を打つ動作である。つば競り合いになった後、機を見てつば元で相手のつば元を斜め左方に軽く押す。相手が押し返す。すかさず左斜め左方に退きながら小手を打つ。
(注)間合いが近いため、足の踏み方が不正となって体がねじれ、左舷は上がって平打ちとなりやすい。
−離れ際、胴の打ち方−
(これは)つば競り合いの場合、相手の虚隙に乗じ、離れ際に胴を打つ動作である。つば競り合いになった後、機を見てつば元で相手のつば元を軽く下方に押す。相手が押し返す。すかさず退きながら相手の胴を打つ。
(注)上体が前Oとなる。打つ部位にだけ着目し、腰が引けるOOOがある。着眼は相手の目とし、踏み切りを正しく、ことに後退に際して左足を踏みつけないようにする。
※Oは、判読不能文字。

つば競り合いからの「離れ際の技」は、いずれも相手を押し、相手が押し返す力を利用して打つもの、としています。現代剣道、特に小中学生の稽古においては、意識的に隙をつくり、打つことを稽古していますが、押して、押し返す相手の力を利用して打つこと、を指導することです。泉流では、自ら相手の隙をつくり、打つこと、を技としています。「剣道日記(解説)」を読み込むことです。
 
 
 
 

剣正塾教本 −警視庁剣道教本を読む−

目次
剣道第一基本1〜2剣道第二基本1〜3剣道第二基本4〜5剣道第三基本1〜2剣道第三基本3〜4剣道第三基本5〜6剣道第三基本7〜