出版物の紹介
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●連載 剣正塾教本
bP 警視庁剣道教本を読む
bQ 高校生を対象にした技の研究(新連載)
 
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剣道第三基本3
 
 3、打突(起こり技)
 −要義−
 起こりの技とは、相手が技を出そうと起こる頭を打突する技である。
 起こり頭には有形と無形とがある。有形の起こり頭とは、打突しようとして拳と剣先がわずかに動作に現われたところ。
  無形の起こりとは、打突しようとする意がきざして、まさに動作に現わすようにするいわゆる発意のところである。
 およそ剣道は、実を避けて虚を打つことを肝要とする。すなわち彼我相対したとき、相手の剣先がまだ動かず、心意いまだきざさないときは実である。この場合、自分からみだりには打突を加えれば、相手はこれを防ぎまたは反撃を加える。これに反し、相手が打突しようとするとき心意は打つことにとらわれて、その剣に起ろうとして他を顧る余地がない。すなわち虚である。その虚を自分の実をもって打突するもので、起こり技の妙技はここにあって、相手の発意のところ、無形の起こり頭をすかさず打突するもので、発意ところは心意の作用であるから、ただ無念無想、明鏡止水の心境にだけ感応するものである。
 基本においては有形の起こり頭を打突するが、習技に当たってはこの有形の起こり頭の機会の看破と瞬息の打突に習熟し、漸次心境を進め、不知不識のうちに無形の起こり頭を感応し、この打突を自得することが必要である。

 相手を見て、打突する。「剣道」においては、あたり前のことです。しかし、「現代剣道」においては、これが特異なことになっています(と感じられます)。その端的な例が、相手の剣先が、自分の突きの部位又は体の中心(中墨という)を差しているにもかかわらず、何もしないで打ち込んでいること(結果的に剣先で体を制されるか、向かい突きを喰らうことになる)です。
 剣道において、打突する機会は、大別すれば二つしかないと言えます。一つは、相手の竹刀を殺して打突することであり、後の一つが、相手が打突しようとした瞬間に打ち、突くことです。ここでいう「起こり頭」を打突することです。
 「教本」では、動きの見える起こり(有形の起こり)を打突することから稽古する、としています。間違いはありません。ただ、留意しなければならないことは相手の動きを待たないことです。相手に待ちを読まれ、返されてしまうからです。大事なことは、攻めて、打ちを誘い、起こりを打つことです。これが、無形の起こりの打突につながることになるのです。
 
剣道第三基本4
 
 3、打突(起こり技)
 −起こり、面の打ち方−
 起こり、面の打ち方とは、相手が面を打とうとして技に起こる頭を打つ動作である。

 長崎先生は、泉先生の教訓として次の一文を遺されています。「相手に『起こり』の技が使えるようになれば、一人前であり、剣道の醍醐味である。修練し、技ができ、目が肥え、人ができてこなければやれるものではない」。起こりの技が高度な技であることは誰もが知ることです。これは、意識的な稽古なくして習得できることではありません。
 「教本」には、この他に二つの起こりの技が収められています。

 −起こり、小手の打ち方−
起こり、小手の打ち方とは、相手が小手を打とうとして起る頭の小手を打つ動作である。

 −起こり、喉の突き方−
  起こり、喉の突き方とは、相手が喉を突こうとして起る頭の喉を突く動作である。起こる頭を乗る気持ちで刀刃を右に返し、すり込むようにして喉を突く。
  元の突きは前突きとし、起った刀はすり込まれるので、刀刃は左方に向剣先はやや右斜めにはずれる。

 起こり、喉の突き方は、相手の表からの正面突きを気で感じて、表から表突きに相手の喉を突くものです。攻防一体、相手の突きを竹刀の左の側面(刀の鎬にあたる部分)で抑えて外すと同時に喉を突いています。「教本」には書かれていないことですが、裏からの正面突きに対しては、裏からの裏突きに突くことが考えられます。竹刀の右の側面で相手の突きを抑えて外すと同時に相手の喉を突く。表裏、同時に学ぶことが大事です。
 「教本」では、起こり技について、千葉周作の一文を引用して解説しています。

 「(起こりの技の理法を)心、意、識の三つで説明して曰く『心とは敵を一体に広く見る処。意見とは斯(し)くせん、箇様せんと思ふ処。識とは悠々見留めその思ふ処をなしたるを云う。故(ゆえ)に向ふを打につは意の処を打つべし。意とは即ち起り頭にてドカドカと起る処なり。然(しか)れどもそのドカドカの処にて此方(このかた)より打ち突きを出せば必ず相打ちになるものなり。依(よ)ってドカと云う処にて打ち突きを出せば勝利疑いなかるべつ』(以下省略)」。

剣正塾教本 −警視庁剣道教本を読む−

目次
剣道第一基本1〜2剣道第二基本1〜3剣道第二基本4〜5剣道第三基本1〜2剣道第三基本3〜4剣道第三基本5〜6剣道第三基本7〜