出版物の紹介
絶版と思われていた剣道日記が発見されました!
限定30冊のみ販売致します。
●連載 剣正塾教本
bP 警視庁剣道教本を読む
bQ 高校生を対象にした技の研究(新連載)
 
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剣道第二基本1
1、第一基本指導法(省略)
2、構え方(省略)
3、打突(張り技)
−要義−
 張り技は、相手の技に起る頭の刀を張り打突する技である。本技は、相手の刀を強く払いまたは切り落すのではなく、相手が技に起ろうとして掌のうちの握りがゆるんだせつなを掌のうちの冴えで軽く張り、相手の剣先の反れたところを一呼吸で打突するところに妙技があるので、張りの機会と掌のうちの作用が最もたいせつである。

張り、竹刀の左右の側面を使うのは、抑えと同じですが、相手の竹刀を自分の竹刀の側面で弾くという違いがあります。相手の竹刀を叩き落とすほどに強く腕を使うのではなく「手のうちの冴えで軽く張る(打つ)」ことです。それゆえに「相手の起こり」を打ち(張り)、ただちに打突することです。「張り」と「打突」を一呼吸、一挙動として行なうよう心掛けることです。「警視庁剣道教本」(以降「教本」と称する)では、次の手順で稽古することを求めています。
「左に張り、面の打ち方」−左に張り、面の打ち方とは、相手が打突しようとして技に起る頭の刀を左に張り、頭を打つ動作である。元が機を見て「打て」の動令で少し掌と剣先が起る頭を、習技者は右足をわずかに踏み出し元の刀の物打ちどころを、自分の刀の切先より約10センチ程度の左鎬(表)をもって、掌のうちの冴えで軽くやや斜め前方に張り、すかさず踏み込んで面を打つ。技の稽古の要領として理解することです。「(元に)少し掌と剣先が起る頭」を「相手に一足一刀の間から打ち間に攻め入ってもらい」と読み替え、相手の竹刀を自分の竹刀の左側面で張って(小さく打って)剣先を外し、手首を返して(刃すじを正して)面を打つことです。難しい場合は、竹刀の右側面で平(ひら)に面を打つことです。これは、表からの張り(技)です。「教本」では、表を左、裏を右と表記しています。裏からの張りは、次の点に留意することです。

 〜元の刀に添うて剣先を少し左方に下げながらくぐらせ中心を突く心持ちで右鎬(裏)軽く斜め前方に張り、すかさず踏み込んで面を打つ。 泉先生は、抑える場合、表は左手を、裏は右手を主に使う、と指導されていましたが、張りの場合も同じだろうと思います。
 
剣道第二基本2
3、打突(すり上げ技)
−要義−
すり上げ技は、相手の打ってくる刀をすり上げて打つ技である。本技は、相手の刀を受けまたは払うのではなく、相手の刀勢を体の捌きと鎬の効用とを利用してすり上げ、その鋭鋒を削ぎ、すかさず打つもので、その機会、間合い、体の捌き及び掌の裡の作用が最もたいせつである。

「教本」には、1面を左にすり上げ、面を打つ、2面を右にすり上げ、小手を打つ技が収められています。この他には、小手を右にすり上げて、小手を、面を打つ技があります。すり上げ技を使う場合に留意したいことは、竹刀を刀と同じように使うのではなく、刀と同じ機能を果たすように使うことです。左にすり上げる場合は、左手(握り)を左に、右にすり上げる場合は、左手(握り)を右に持って行くことです。さらに機能を高めるために体を心持ち左又は右に出すようにしてすり上げ、体を左、右に戻して打つことです。体の捌き、鎬の効用の読み取りを誤らないことです。

3、打突(抜き技)
−要義−
抜き技は、相手が打ってくるのを体を退き、または披(ひら)いて、その刀を抜きはずし、すかさず打つ技である。本技は、刀を用いず体の捌きをもって相手の刀をはずし、姿勢の崩れるところを打つもので無刀の心構えと、間合いの遠近の見切り及び巧妙な体の運用に熟練することが肝要である。

体を引いて相手の竹刀を抜く。抜き方は一様ではありません。中段の構えのまま左足・右足と後ろに引いて抜く。右足だけを引いて抜く。と同時に右足・左足と前に出して面を打つ。右足を前に出して面を打つ。左足を後ろに引いて面を打つことができます。さらには、左手の肘を伸ばし、左の握りの部分で相手の顎を下から突き上げるように振り被って小手打ちを抜き、相手の面を打つ。足は、左、右と後に引く。中段の構えのまま、右足を右に出して相手の小手打ちを抜き、左足を右に引き付けて面を打つ。左手首を支点に、右手の握りの部分を自分の右胸に引き、伸ばして突き、あるいは竹刀を叩いて左面を打つ。又は、右手の握りの部分を左胸に引いて小手打ちを抜き、腕を伸ばして相手の右面を打つ。いずれも「剣道日記」の中にある抜き技です。この他にも下段に抜く技があります。
いつ、どんな時に、どんな技を使うのか。稽古の中で自分のものにすることです。
 
剣道第二基本3
3、打突(応じ技)
 −要義−
 応じ技は、相手の打突に応じ間髪をいれず打突する技である。
 本技で最も注意するのは、受け止める気持ちにならないことである。受け止めた後、打突するときは気分は切れ、動作は二段となって応じ技の妙味はない。応ずるや否や電光石火一呼吸に打突できるよう熟練することが肝要である。

 ここでは、応じ技に関して大事なことが省かれています。力が拮抗している相手の打突に容易に応じることができるのでしょうか。難しいことだと思います。では、秘訣はないのでしょうか。ある、と言えます。「剣道の『応じ技』というものは、相手に打ち出させるように持って行かなくては正確に応じられるものではない。某範士は、『勘』でやると言っていたが、考え方としては情けないことである。面を打ちたい者には、面を打ち出し易い間合いをつけることである。面を打って来ることが分かっていれば、応じ面、応じ胴、応じ小手が無理なくできるのである。その方法には、相手の打ち間に攻め入り、切っ先を開く、下げる、などの工夫が必要である」。泉先生の教えです。言い換えると「攻めて打ちを誘い、応じて打つ」ということになります。孫子の兵法、「勝兵は、勝ちてしかる後に戦いを挑む」ことにつながることだろうと思います。決して忘れないことです。

  小手を右に応じて、小手打ち。(この打ち方とは)相手が小手を打ってくるのを体を退いてこれを右に応じ、小手を打つ動作である。 応じ方。両手をやや右斜めに伸ばし、右拳はほぼ乳の高さ、その位置は体の中心より少し右方とし、左拳は臍の高さ、その位置は右拳より少し右方とし、刀の右鎬で応じる。そして、その応じたところは、元の中墨をはずれないことが必要である。
 足の踏み方。左足を左斜めに退き、右足はこれに連れて引くものとする。そしてその踵は浮かし、爪先だけ軽く地につける程度として、応じるや否や一呼吸で踏み込みができるようにすること。

 右手は体の中心より少し右、左手は右手より少し右に、という手(腕)の使い方に留意することです。この手(腕)の使い方は、泉流の「左手は、右手の下にやる」という使い方と同じです。「応じ技のない剣道は、半分の力で戦っているようなものだ」という指摘は、己れにも向けられた言葉です。

剣正塾教本 −警視庁剣道教本を読む−

目次
剣道第一基本1〜2剣道第二基本1〜3剣道第二基本4〜5剣道第三基本1〜2剣道第三基本3〜4剣道第三基本5〜6剣道第三基本7〜