出版物の紹介
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●連載 剣正塾教本
bP 警視庁剣道教本を読む
bQ 高校生を対象にした技の研究(新連載)
 
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剣道第三基本1
 
 2、間合い
 −要義−
 間合いとは、彼我相対して構えた距離をいう。そしてこれが遠過ぎるときは、打突が不可能で、近過ぎれば打突が不正確になる。すなわち適当な間合いは、一歩踏み込めば打突ができ、一歩退けば打突を避けられる距離で、これを一足一刀の間合いといい「常の間合い」または単に間合いともいう。
 なお、一足一刀の間合いに対して「近間」「遠間」の二つがある。
 近間とは、一足一刀の間合いより近い間合いで、体の運用の未熟な初心者の指導は、この間合いによるがよく、遠間とは、一足一刀の間合いより遠い間合いで、掛かり稽古、試合はこの間合いで思い切って行なうのが効果的である。

 泉先生は、間合いについて「剣道日記」の中で大変厳しい指摘をされています。「間(ま)の取り方。自分の間ということは、一歩踏み出して面にあたる距離。中段の構えから打ち出して、相手の面にあたる距離を意識して打っているかというと、そうでない者が多い。相手の構えがどうなっているから、自分の剣先が相手の剣のどこまで 入らなければ届かないかを知って打っている者があまりいないようだ。遠間の技、近間の技との区別も知らないようだ」(「剣道日記」p38)
 間合い、「現代剣道」で考慮されないことのひとつと言えます。剣先が相手の唾元に届くほどの間合いから打ち出しています。「竹刀剣道」だからできることだろうと思います。一足一刀の互角の間に構え、剣先を争い、自分の打ち間に攻め入り、打突する。ここに抑え、張り、払い、巻き落し、すり上げ、すり込み、応じ、返し、いなす、という技が、打突が生まれる条件があるのです。泉先生は、こうしたことを熟知された上で「自分の間」「遠間の技」「近間の技」に言及されているのです。
 間合いは、次の攻め、打ち、突き、に深く関わっています。まずは攻め。攻めとは、自分の間、自分の打ち間に攻め入ることです。表から攻め入るのか、裏から攻め入るのか。回して、表又は裏から攻め入るのか。表から、裏から抑えて攻め入るのか、攻めも色々です。と同時に右、左と「送り足」に攻め入るのか、左、右と「継ぎ足」に、「歩み足」に打ち間に入るのか、幾つもの使い方があります。これらに竹刀の、手の使い方が加わり、攻めは無限に広がることになります。肝心なことは、いつ、どんな攻め方、打ち方、突き方、応じ方をするか、です。意識的な稽古以外にないと言えます。
 
剣道第三基本2
 
 2、間合い
 −要義−
 間合いは、また「我が間」「彼の間」の二つに分けることができる。すなわち我が間とは、自分の剣先より自分の体に至る空間、彼の間とは、相手の剣先よりその体に至る空間を言う。
 この間は、いわゆる「不敗の間」で、これを破られることがなく、完全に保つときは相手より容易に打突されることはない。しかし以上はいずれも有形の間合いであって、間合いの真の妙諦は、無形の間合いにあることを知らなければならない。
 たとえば、彼我相対したとき、自分の心境は明鏡止水、一点の曇りがないのに反して、相手の心境は驚恐疑惑の雑念に覆われる場合、形の上においては彼我の距離は等しいが、自分は無念無想の位で気が乗っているため、打突は容易に届くが、相手は気で圧迫され危惧逡巡しての動作であるため、打突は届くことがむずかしい。即ちこれは相手から遠く自分から近い間合いであり、心意の活作用に基づく無形の間合いである。
 前述の我が間というのも、また心意の作用によるところが多く、この幽玄微妙の活作用に至っては、筆舌のよく教えるところではない。百練千磨の功を積み、以心伝心もって自得するほかはない。
 ただし、形の上においてもこれが理法は適用されるもので、たとえば、自分は進退軽捷で進出量多く、相手は進退鈍重で進出量が少ないとき、彼我遠間に構えれば自分の打突は届くが、相手の打突は容易に届かない。いわゆる「相手から遠く、自分から近い間合い」となる。
 即ち遠間の錬擇(択)を肝要とするゆえんである。

 「間合いの真の妙諦(みょうてい。みょうたい。そのものの存在理由として高く評価できるよさ)は、無形の間合いであることを知らなければならない」という間合い、めざすものです。しかし、有形の間合い、「不敗の間」を極めることなくして「無形の間」に至ることはできません。
 「突きの泉」「手首の柔らかい泉」「足にこだわる泉」という異名のある泉先生ですが、同時に「間合い」を重視する「間合いの泉」先生でもありました。「間、間合い、打ち間、間の取り方により勝負がつくようである」「打つ間(に)、半歩入る。相手が表より抑える。これが定法だ」「剣道では、打ち間に入ること、打ち間に入られると負ける。入らねば勝てぬ」などなど「剣道日記」に記されています。まず、これらの習得に心を砕くことです。
 

剣正塾教本 −警視庁剣道教本を読む−

目次
剣道第一基本1〜2剣道第二基本1〜3剣道第二基本4〜5剣道第三基本1〜2剣道第三基本3〜4剣道第三基本5〜6剣道第三基本7〜